2017年12月27日水曜日

病理診断を学ぶ 〜 皮膚

2022/01/01 掲載されている本について情報をアップデートしました.
がとりあえず大きな変更はありません.

2021/05/05 掲載されている本について情報をアップデートしました.
* 日本語の本を中心として新しい本がどんどん出版されていますが,正直全て買う必要があるのか微妙な感じです.著者が結構かぶっていたりするので,実際に手にとってみて良さそうなものを買ってみると良いでしょう.

皮膚病理は難しい,というか病理医が細かく知る必要はない気がする.という元も子もない前提をさしておいて,幾つか本を紹介してみる.皮膚病理は結構たくさん本があって全て紹介していると発散しそうなので,幾つかに絞って,かつ洋書は大御所のものに限ることにする.

まず最初の第1歩としては,,,

改訂新版 皮膚病理学 (2012)

この本は 2012 年と書いてあるが,2000 年以前のかなり古い本.出版元が変わってカバーだけ差し替えた感じだけど,本質的には変わっていない.皮膚科自体が古い用語を好む領域なので(多分幾つかあると思うのだが,免疫染色などよりも形態学的診断が好まれるから,とか炎症性皮膚疾患などは遺伝子異常等とはあまり関連がないことなどか?→あまり関係がない,というのはちょっと言い過ぎた.関係があっても組織学的診断には反映されにくいとしておこう),実際問題新しい概念というのはそんなに登場していなくて,この古い本でも有用.申込書の臨床診断に書いてある診断名を理解できない人は少なからずいるはず.そういう時に便利.

皮膚科サブスペシャリティーシリーズ 1冊でわかる皮膚病理 (2010)

はじめに言っておくと,決して一冊では分かるようにはならない.この本を嫌っている人が少なからずいて,結構重要な疾患にもかかわらず,鑑別診断でわずか数行コメントするに留まっているものがそこそこあるということ.まぁ写真もきれいだしきちんと載っているので結構有用だとは思うのだけれども,一冊で十分というのははっきり言って言い過ぎ.まぁ色々載っているので便利ではある.

実践皮膚病理診断 (2017)

この本は 2017 年に出たばかりの比較的新しい本.この本の良いところは炎症性皮膚疾患の分類法.炎症性皮膚疾患については Ackerman (surgical pathology じゃない方)のアルゴリズムが有名だけれども,superficial perivascular dermatitis とすべきか spongiotic dermatitis とすべきかとか,悩むことがしばしばあって,このアルゴリズムは結構使いにくい.著者らは,ハイブリッド診断として,どこの所見から入っても診断にたどり着くように工夫をこらしている.もちろんこれが全て,というわけではないのだが,なかなかわかりやすいと思う.比較的新しい診断アルゴリズムで結構おすすめ.

皮膚病理組織診断学入門(改訂第3版) (2017)

この本はとても有名で,3 版になってから一回り大きくなった.この本は結構昔からあるので愛用している先生は多いのでは?鑑別診断が丁寧に書いてあるので取っ掛かりがつかめたら,そこを頼りに鑑別がしやすい.ただ,謎なのがなぜ病名がアルファベット順にしているのか.ただ,実際にはこれ,調べようとするとき意外と分かりやすかったりする.

みき先生の皮膚病理診断ABC (1) 表皮系病変 (2021)
みき先生の皮膚病理診断ABC (2) 付属器系病変 (2007)
みき先生の皮膚病理診断ABC (3) メラノサイト系病変 (2009)
みき先生の皮膚病理診断ABC (4) 炎症性病変 (2013)


みき先生の本の素晴らしさは特に言及する必要はないと思う.まぁこんなにありふれた疾患に対して鑑別診断も含めて丁寧に記載している事自体がすごいということ.ここで細かく説明するよりもとりあえず本を手にとって見て欲しい.何かが変わるはずだ.ちなみに表皮系病変から update されている.


皮膚病理について,これ一冊でという比較的まともな本が何冊も登場してきた.特に付属器腫瘍の本は網羅的でよく書けている.病理診断リファレンスも網羅的だが,腫瘍・非腫瘍を一冊で網羅しようとするのはなかなか難しいように思う.いずれもとてもおすすめの本


確かに良さそうに思うのだが,正直皮膚病理の本が何冊もあってもしょうがない.ここまで買う必要があるのかという疑問も出てこなくはない.

皮膚科医をターゲットにしているせいもあって,和書はほんと挙げればキリがない.気が向いたらまた追記することとして洋書を数冊提示して終わることにしよう.

WHO Classification of Skin Tumours (Who Classification of Tumours: International Agency for Research on Cancer) (2018)

腫瘍の分類においては WHO 分類を無視することは出来ない.Keratoacanthoma などの分類で日本とは考え方が異なる部分もあるが,原則的 WHO 分類に従うべき.

Lever's Histopathology of the Skin (2014)

リンクを貼っておいていうのも何だが,Lever は少し読みにくい.他の本に比べて写真が少ないので何を言っているのかがわかりにくいことがある.ちなみに皮膚科の大御所の先生たちは Lever 自身が書いた版を使って勉強しろと言っている.古本で amazon に転がっているので興味のある人はどうぞ.

・McKee's Pathology of the
Skin (2019)

分子生物学的なことなどを含めて,おそらくマッキーが一番詳しいと思っている.写真も大きく内容もとても詳しいので,皮膚病理の最後の砦として調べ物をするには最適.ちなみにマッキー先生はもう引退している.

Weedon's Skin Pathology (2020)

現時点でどれか一冊洋書をと言われると,この本がお勧め.これは一冊にまとめているので重たくて腕が抜けそうになるが,情報量は当然多い.ちなみにどの本もそうで,特に炎症性皮膚疾患はその傾向が強いけれど,著者によって分類方法が結構変わってきたりする.どれが正解というのもないので別にいいんだろうけれども,非専門家としてはどれか一冊に軸足を置いておいたほうが良いと思う.Weedon, Mckee もどちらも最近改訂されており,いずれか一冊で十分だし,皮膚病理が好きであれば両方とも持っておいても損はない.

Inflammatory Dermatopathology: A Pathologist's Survival Guide (2016)

炎症性皮膚疾患の診断の仕方を記載した良書.コンパクトで著者いわく週末かければ読めると言っているが,non-native の日本人としてはまず週末だけでは集中力が持たない.この本は結構現実的なラインで話を勧めている.Spongiotic dermatitis と psoriasiform dermatitis は時として鑑別が難しくどちらとしても良い(所見をきちんと記載すること)など現実的なことを言ってくれている.Sample report が秀逸.Cleveland Clinic ではこういうふうに書いているのかというのはとても参考になる.Clinicopathologic correlation is recommended. がやたらと多いのは気になったけど笑.


皮膚の軟部腫瘍の比較的数少ない本.High-Yield series と同じスタイルの本.皮膚軟部腫瘍に関する本は非常に少なく,貴重な本.皮膚軟部腫瘍は皮膚 WHO bluebook の他に軟部腫瘍のテキストにも記載がある.

あとは個人的な趣味に走る.

Pearls and Pitfalls in Neoplastic Dermatopathology (2016)
Pearls and Pitfalls in Nonneoplastic Dermatopathology (2016)


この本の良いところは鑑別診断について丁寧に記載しているところと,病変の典型的な所見と経時的な変化を細かく書いてあるところ.母斑などは経時的に呈する像が変わることがよくあるけれども,その所見も丁寧に記載されている.


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